「桜の下で陽気に騒ぐのは江戸時代からの話で、大昔は桜の花の下は人の近寄らない恐ろしい場所と思われていた」
というニュアンスの語りから始まります。
そして桜の森にまつわる「山賊の男」と「捕らえられた女」の怖ろしく不思議な物語が語られていくのです。
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僕の住んでいる地域でも今が桜の真っ盛り。どこもかしこも満開です。
お花見にいくなら今週中でしょうね。
桜並木のきれいなところはたくさんありますが、「桜の森」と呼べそうなところはあまりありません。
ただ僕が以前から「桜の森」っぽいなと思っている場所があって、数年ぶりに行ってみました。
本当にきれいなところなのですが、あまり人も多くなくて好きな場所です。
ただ、以前来たときよりも「森」感が少なくなった気が・・・。
どうやら上の方の枝がスッキリと剪定されているようです。
以前は木の下では日の光が遮られるくらい桜の花が鬱蒼としていて、木々の間を歩きながら坂口安吾の小説を思い出していたのでした。
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小説「桜の森の満開の下」、内容も傑作といえるのでしょうが、まず、このタイトルが秀逸ですよね。
「美しさ」と、「何かが起きそうな感じ」がタイトルだけでも漂ってきます。
助詞「の」で柔らかくつなぎながら、「広」から「狭」へ、「上」から「下」へ視点を導いていく感じが何らかの物語を予感させるのでしょうか。
声に出せば七七で語呂もよく心地よいです。
せっかくの七七なので、これを下の句にして短歌を作ってみる遊びをしてみたくなりました。
僕だけが置いてけぼりの夕暮れの桜の森の満開の下
傷つけることだってある知っている桜の森の満開の下
さよならの手はひらひらと舞いながら桜の森の満開の下
「桜の森の満開の下」をつけるとたちまち詩情があふれてくる気がします。
桜が満開なんだから、もっと明るい歌でもいいのに、今はなんかこんな気分なんすかね~。
春はさみしい季節でもあります。 (花びらになって消えながら)