角田光代の小説「タラント」を読んでいる。
今回も特に本のあらすじや感想を書くわけではない。
角田光代さん。
書店でも図書館でも、よくお名前は拝見する。
ドラマや映画の原作になっている作品もあるし、著作も多い。
ただ、名前を文字で見ることは多いが、音で聞いたことがなかった。
僕はこの「角田」さんの読みにいつも迷う。
カクタ、カドタ、ツノダ、スミダ。
さらにその「タ」と「ダ」の8パターン。
まあ「カドダ」とか「ツノタ」は言いにくそうだけど。
僕が最も読み方に迷う名字と言ってもいい。
角田光代さんの場合、
本気でその名前を口にしようと思えば、図書館ではカ行のコーナーに置いてあるのだから、カクタさんかカドタさんということになるのだろうけど、
僕の脳内では何故か、なんとなく「スミダミツヨさん」と呼んでいた気がする。
なんとなく、だ。
「カクタ」は何だか いかつい。
僕の中で「カクタ」と言えば、正道会館最高師範、格闘家の角田信朗だ。
角田光代さんの名前を最初に認識したときの作品のイメージが、僕の脳の中で「カクタ」に行かせず「スミダ」に行かせてしまうのだと思う。
実生活でも「角田さん」に出会うことがあり、やはり読み方に悩むのだが、結局のところ「カクタさん」以外には会ったことがない。
そしてだいたいニックネームは「カクちゃん」だ。
名前を、字面の印象で捉えて迷うのが「萩」と「荻」だ。
最初に名前を音で聞いて覚えていればいいのだが、書類に書いてある文字だけで覚えた場合、目の前のこの人が「ハギワラさん」だったか「オギワラさん」だったか瞬間迷うことがある。
その結果、「ホギワラさん・・・」などと誤魔化してゴニョゴニョと呼びかけてみたりする。
多分バレてる。
以前、仕事のお客さんからの電話で、初めて来られる方からの連絡を受けた。
年配の男性の方だった。
来られる時間を決めて、お名前を伺ったのだが、ちょっと聞き取りづらかった。
「ハニタです。」と言ったようには聞こえた。
頭の中では「埴輪の埴に、田んぼの田かな?」など思い浮かべていた。
正確な名前は実際来られたときに伺えばいい。「あの電話の方だな。」というのが僕に分かりさえすればいいので、特に聞き返すことはしなかった。
何回か聞き返しても、結局は解らないんじゃないか?という予感もあった。
名前の復唱はせず「あぁ、はい。わかりました。」とだけ言うと、
おそらくこの方は、電話でよく名前を聞き間違えられることが多いのであろう。
僕の返事の仕方に、「ちゃんと伝わっていない感」を感じられたようで、
「ハ、 ニ〜、 タ、 で〜 す~。」ともう一度繰り返し名乗ってくれた。
僕は「はい。わかりましたー。」と言って、メモ用紙に
「14:00 ハニータ」と書いた。
午後2時に来られたのは「萩田さん」というおじいちゃんだった。
僕は、なるほどな、と思った。
僕は、萩田さんのことを心のなかではずっと「ハニータ♡」と呼んでいる。