仕事場の大きな窓から目の前の通りがよく見える。
変わらない毎日の景色だが、多少の変化はある。
今週でいえば、もう春休み終わったんだなーとか、今日は小学校の入学式かーとか。
もう少ししたら黄色いランドセルカバーの一年生たちが下校する姿を見るようになるんだろう。
毎年四月あたりはその姿の小ささに微かな感動を覚える。
普段見かける「小学生」と認識する人たちよりもめちゃ小さい。
「お〜い、しっかり歩けよ〜。」思わず声をかけたくなる。
窓から見える景色として、「オレンジ色のポール」がある。
歩道と個人の敷地の境目に等間隔に立てているもので、地面から60〜70センチくらい。
軟らかい樹脂製で、オレンジにシルバーの夜光反射の帯が2本ついている。
下校する半ズボンの制服姿の小学生たちは何故かそのポールを跨いで歩きたがる。
小学生だとちょうどポールの先に股間が当たるくらいの高さなので、恥骨のあたりでポールをぐいっと押していく。
軟らかい素材のポールはぎゅうぅっとしなる。
そして子どもが通り過ぎるとばいぃ〜んと戻る。
彼らはその感触が楽しいらしく、等間隔に並ぶポールを次々に股間で押しながら歩いていく。
ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。
その後ろの子も同じようにする。
ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。ぎゅうぅっ、ばいぃ~ん。
小学生たちが列をなして股間をポールに押しつけながら歩いていく。
毎日毎日。
時々、スカートの女子たちも同じようにやっていることもある。
五月くらいになると、授業の「学区内探検」みたいな感じで、クラス揃って前の通りをぞろぞろ歩いていくことがある。
いつものクセで「ぎゅう、ばい~ん」をやる子がいると、クラスのみんなが続々とぎゅうぅっ、ばいぃ~んをすることになる。
まるで学習指導要領で決められた課題のように。
どうやら僕の仕事場の前は、ポールの数と歩きやすさによって「ぎゅう、ばい〜ん」のメッカらしい。
みんな楽しそうだ。
しかし、どうしても「やり過ぎちゃう人たち」というのはいるもので、股間で押すだけでは飽き足らず、足で踏んづけてでもとことんポールを折り曲げたい派が出てくる。
ぎゅうううううぅっ、、ばいいいぃ~~ん!
地面まで無理矢理にしならせられたポールは勢いよく戻る。
彼らは強い快感を得られたようだ。
何度も何度も強めの「ぎゅう、ばい〜ん」を楽しんでいる。
そして数日後には根元からぽっきり折れたオレンジ色のポールが地面に転がっていることになる。
初めのうちは折れたポールは新しいものに取り替えられていたが、最近は折れたポールはそのままとなり、地面にその名残りのボルトで取り付ける部分だけが残っている。
窓から見えるポールは、今はもう、一本を残すのみである。