totoを当てる日

サッカーくじtotoを当てて人生を変える話

「ちいさなかぶ」①

実は最近バイクを買った。

と言っても50cc、原付なんだけど。

 

四月から娘が暮らすことになった学校の寮は、かなり不便な場所にある。その学校では「将来の仕事的にも自動車は欠かせない」ということもあってか、学生でも自分の車を所有している人も多い。みんながみんな高卒の年齢でもないし。

うちはどうしようか迷った。生活の足は必要だと思うが、自動車、買うのは中古の安いのを買ったとしても、18歳での高い保険料を含む維持費もあるし、全部を親が負担して与えるのもどうなのかな?と思う。

ある程度「自分でやりくりできる状況で手に入れるもの」なのではないかとも思うのだ。

 

そんな訳で、僕は娘に原付バイクを勧めた。

「このバイク、二人で半分ずつ出し合って買わない?」

中古バイク屋さんのサイトで売りに出ていたタイヤの小っちゃいカブ、「リトルカブ」の画像をLINEで送った。

 

普通自動車免許で乗れる「原付」で、ある程度の距離を移動する耐久性にも優れた「働くバイク」であるカブ、シフトペダルを操作する愉しみもあり、カラーリングも含めて見た目も可愛い。

最高じゃね?

 

「いいね」。

娘も乗ってきた。

 

次の休み、早速僕はバイク屋さんに赴き、リトルカブ購入の契約をした。

すでに生産終了から何年も経っている「リトルカブ」なのだが、見せてもらったバイクは車体も綺麗で走行距離もそれほど多くない。自賠責保険が四年分残っていた。

以前からこの末っ子の娘をカブに乗らせたら面白そう似合いそうだと思っていたのだ。だからあまり迷うこともなく即決した。

整備や手続きをしてもらって、一週間後に取りに来て乗って帰ることにした。

 

 

さて。

僕は以前から「バイクに乗りたい」とずっと思っていた。ただ自営業の僕は、絶対に仕事を休めないし(休んだら即無収入)、そのため怪我をするわけにもいかない。特に仕事で大切にしている手を怪我することは絶対にダメ。と強く思っていたので、「(転倒の可能性を0にはできない)バイクは禁止」を長年自分に課していた。

バイクに乗った経験といえば、大学時代に「バイトに行くために、原付スクーターを日替わりで数人の友人から借りて乗っていた時期が一年弱くらいあった」というだけだ。

それでも風を切って走るバイクの心地よい感覚はどこかで憶えており、ここ数年バイクに乗りたい熱が高まってきていた。

子ども達の学校がみんな終わったら、最悪、今の仕事を辞めることになってしまっても生活は何とかなるんじゃないか?ちゃんと安全運転をすれば、バイクだからってそうそうすぐに怪我をするってこともないんじゃないか?

ある程度子ども達の学費の目処が立った最近では、だんだんそう思うようになってきた。

僕が乗りたいのは原付ではないけれど、カブはカブで乗ってみたいとも思う。

でも決して娘をダシに自分の乗りたかったリトルカブを買ったわけではない。

妻にはちょっとそう思われているかもしれないが、そんなことではない!

娘にも何だかちょっとそう思われているかもしれないが、決して・・・

 

僕は納車されたカブを自宅まで走らせるにあたって、日々、YouTubeでカブの操作方法を学び、よく解っていなかった二段階右折の方法を学び、近くの国道のバイパスを原付は走っていいのかどうかを人に聞いて回った。

実はこの「国道を原付で走っていいのか」問題は、意外に、明確な答えを持っている人がいなかった。そもそもはバイク屋のお姉さんが「ダメです。違反になります。」と教えてくれたことが発端だったのだが、いくら調べても「ダメ」の根拠が見つけられなかったのだ。

長年原付スクーターに乗っているおばちゃん二、三人に訊いたところ、「知らない」「走ったことない」「考えたこともない」とのことだった。

バイクに詳しそうな人に訊いたが、「そういえば走ってるのを見たことはないですね。」「原付は乗ったことがないのでよく分からないです。」ということだった。

その国道バイパスでピザ屋のバイクが走っているのを見たことがある、という妻が、「交番に行って聞きなよ。」と言った。

ウォーキングのついでに国道沿いにある交番で訊いたら、「我々も全ての道路の個別の規制を把握しているわけではないのでお答えできません。基本的には道路の標識に従って下さい。どうしても分からなかったら県警の交通規制課(と言われたと思う)に問い合わせてもらえれば明確な答えが聞けると思います。」との答えだった。

個別の規制も何も、この交番の目の前の道路を原付で走っていいのかどうかを訊いているだけなのだが?と思ったが、プロだからこそ安易に即答できない事情もあるのだろうと思い、笑顔でお礼を言って帰った。側道部分は走って良さそうに思えるのだが、国道バイパスの高速道路みたいに上って合流する上の道、これが判らない。標識は「歩行者ダメ」と「自転車と荷車ダメ」があるだけで、「原付ダメ」は見当たらないのだ。だから走っていいんだと思うのだけど・・・

はっきりさせたいので、県警の交通規制課(に繋いでくれたと思う)に電話をして問い合わせてみた。

「はい。法的には走っていいです。でも周りの車のスピードが速いので、気をつけて走行してくださいねー。」

僕の求めていた明確な答えだった。すっきりした。

 

僕は日々、カブの操作のイメージトレーニングをしながら納車の日を待った。(つづく)