totoを当てる日

サッカーくじtotoを当てて人生を変える話

魚、お腹、コロナ 

この前の「筍のお裾分け」のお返しであろう、お隣さんにお刺身をいただいた。

 

お隣さんは釣りが「趣味の域を超えたライフワーク」のような方で、お裾分けのお返しにいつも美味しい魚をくださる。

 

今日も、釣りたての魚を捌いて刺し身の状態にしてくれた上、3種類の魚の名前までパックにマジックで書いてくれていた。

 

釣りたての新鮮な魚はこりこりと歯ごたえもよく、とても美味しい。

それなのに僕は、美味しく食べたあと必ずお腹を壊してしまう。

 

 

もともとお腹は弱い。ヨワヨワである。

行ったことないけど、仮に病院で診てもらったら「過敏性腸症候群」とかの診断名がつくだろう感じ。

子どもの頃からずっとなので、食事とか冷えとか寝不足とか、気をつけてはいるけど、あまり気にしてはいない。

 

お隣さんの魚で「お腹を壊す」というのはもうちょっと激しいやつだ。

「食あたり」というか、診断名つけるとしたら「細菌性胃腸炎」ってところだろうか。

普段のが「止めてもいい下痢」だとしたら、それは「止めてはダメな下痢」「急いで体の外に出したいやつ」って感じがする。

 

魚に問題があるわけではない。新鮮そのもの。一緒に食べた人たちは全く何の問題もないのだ。僕だけがお腹を壊す。

たくさん食べたわけでもない。

お店で食べた時とか、買ったお刺身とかはそこまででもない。

200%こっちのお腹サイドの問題なのだが、お隣りの魚を食べると何故か100%お腹を壊す。

 

それなら食べなければいい。

・・・でも食べたいのだ。お刺身、好きだし。せっかくいただいたし。

今度は大丈夫かもしれないし。

 

 

 

コロナの第何波だったかの頃にも、同じようにお隣りに魚をいただいたことがあった。二回目のワクチン接種の後くらいの時期だ。

 

食べた日の夜中に激しい腹痛で目を覚まして、しばらくトイレに籠もった。痛い痛い。胃も痛いし、腸も痛い。

でも「ああ、またか」という感じでもある。出すもの出せばいいんだろ、と。

 

翌朝、お腹はまあまあ落ちついていたが、寝不足と食事を抜いたせいか、体は少ししんどかった。

 

その日、体の怠さ、しんどさは時間とともにだんだん強くなって、仕事が終わる頃にはめちゃくちゃしんどくなってきた。

(さっさとシャワーだけ浴びてもう寝よう。)

シャワーから出たら、今まで経験したことのない激しい震えがきた。ガタガタガタガタ…止まらない。何だこれ?身体がうまく動かない。悪寒。ダルい。

体温を計ったら38.8℃だった。

コロナが流行りだしてから毎日検温していたが、初めての発熱だ。

僕は普段、体調を崩してもあまり熱を出すことはない。

 

すぐに思い当たったのは、3日前まで県外から帰省していた息子のことだった。ワクチン接種が始まり、一年半ぶりにやっと顔を見たところだった。普通に元気だったけど、感染はわからない。

 

「もしかしたらコロナかもしれない。」自宅内で隔離され、触ったところを中性洗剤で拭いてもらった。

 

一日中絶食した状態で、ガタガタ震えながら寝た。うんうん唸る。しんどい。

 

それなのに妻は「大丈夫?」と聞いてもくれない。僕の体調不良にだけは、他の人に対してよりも何だか少し厳しい気がする・・・。

また大袈裟に言ってる、くらいに思われてるのかもしれない。

 

・・・まあとにかく隔離だ。LINEで毛布を要求する。

 

 

コロナだったら10日間以上は仕事を閉めなければならないだろう。その間は無収入。

第一波、二波の頃ほど酷くはないが、まだ風評も気になる。コロナになったって言ったら客足も遠のくのではないか?

いろいろ不安だった。

 

 

 

翌朝、熱は下がっていた。

どうしたものか?

 

まあ、でもコロナかどうかの判定をしなければなるまい。人にうつすわけにはいかない。

 

 

仕事場に「臨時休業」の張り紙をして、発熱外来の当番になっている耳鼻科へ電話した。

 

医院の駐車場ではなく裏手の駐車場に車を入れて、着いたらもう一度電話するように言われた。

 

妻に乗せてきてもらったので、換気のために窓を全開にして待っていたら、現れた防護服の一団に、すぐに窓を閉めるよう強い口調で指示された。

そして一団は、テキパキと車の全窓を半透明なビニールシートで覆っていった。

僕は2cm程開けた車の窓に鼻を近づけ、二重ビニールシートの隙間から差し入れられたスーパーロング綿棒で、鼻の中の粘膜を採取してもらった。

20分程で結果が出るという。

 

 

、、、結果は陰性だった。院内に入って来ていいですよ、と電話で言われる。

 

入ると、さっきの防護服を脱いだおじいちゃん先生がいた。(はじめまして。お騒がせしてすみません。)そんな気持ちで診察を受ける。

 

「接客業なのでコロナかどうかはっきりさせたくて。 県外から帰省した大学生の息子のこともありましたし。」

説明していたら、ふと思い出した。

 

「そういえばお隣さんの釣った魚をいただいて食べたらお腹が痛くなったんでした。」

 

お腹が痛くなるのはいつものことだし、それでこんなに熱が出たこともなかったので結びつけてなかったが、胃腸炎なら発熱もあり得るかもしれない。

(ワクチン打って身体の免疫が活性化されてんのかな?)

 

おじいちゃん先生も、まあそうかもしれませんね、うちは耳鼻科なのでお腹なら内科に行ってみますか?みたいな感じだった。とにかくコロナではありません、とのこと。

 

 

僕は張り紙を剥がして、午後から仕事をした。  ほっとした。

 

 

 

 

そのことがあってから、お隣さんからいただいたお刺身は、僕だけ軽く炙ってから食べている。

軽く塩を振って、オリーブオイルでサッと炙る。これもまた美味しい。

 

そうまでして食べたいのか?

・・・はい。 お腹は弱いが、口は卑しいのだと思う。

 

お隣さんに会った時も、「魚、ありがとうございます。美味しかったです。」と嘘でなく言える。