急に寒さが増してきた今週。
朝の風が冷たい。
「北風小僧の寒太郎」を口ずさみながら仕事場に着くと、壁掛けの時計が遅れていた。
電波時計なのでいつも時刻は正確なのだが、電池がなくなってきているようだ。
新しい電池に入れ替えてみたが、時刻は合うようで合わない。
電波は受信しているらしく時刻合わせはできるのだけど、いつの間にかまた遅れている。
かと思えば、昼の休憩時間や夜間にはちゃんと動いているようなのだ。
仕事を始めると時間がずれていく?
よく見ると秒針は普通に進んでいるのだけれど、長針はなぜか逆向きに進んでいるのだった。
さっきまで合っていた時刻がどんどん後ろにずれていく。
2日間ほどいろいろと試しながら観察してみた。
今回初めて知ったのだが、この時計は夜間は(周りが暗くなると)秒針が自動的に止まる仕組みになっているらしい。
そして、秒針が止まっている間は他の針は普通に動いているようだ。
仕事場の灯りを点けて明るくなると、秒針が動き出し、代わりに長針と短針が逆向きに回り始める。
そういう不思議な壊れ方をしているらしかった。
この時計は僕が独立して開業した時に、それまで勤めていた職場の人達がお祝いの品として贈ってくれたものだ。
大きさもデザインも色も、まるで誂えたように部屋の雰囲気にぴったりで気に入っている。記念として盤面に前の職場の名前とスタッフ一同の文字も入っているのだ。
開業して19年。そろそろ時計も壊れるか。
時間がどんどん巻き戻っていく時計を眺める。
「過去に戻って人生をやり直す」みたいな妄想って、みんなするものなのだろうか?
以前の僕はよくしていた。
記憶がある限りの昔、保育園時代に戻ったら・・・とか。高校生からやり直したら・・・とか。
今の意識を持ったまま昔に戻れたら、「こんな人生にしてみたかった」とか、「あの時あんな活躍ができたんじゃないか」とか、「今とは違う、こんな人生になったんじゃないか?」とか、そういう類いの妄想だ。
正確に中身を語るのは恥ずかしい。
最近、その手の妄想をしなくなっているのは、現状に満足している、ということなのだろうか?
それこそ開業した19年前に戻ってやり直せたらどうなんだろう?
19年分の経験から得たものや、時代の流れを知った状態でもう一度始められたなら、今よりももっと上手くやれているのだろうか?
そういえば今年一年間は、「過去に戻る」妄想ではないが、「totoを当てて大金を得られたら」という妄想はよくやっていた。
ほとんど妄想に縋って生きていた。「ここではない何処か」を夢見るのは、人の常なのだろうか。
そして、妄想の中で実現する「やりたいこと」が、本当の「僕のやりたいこと」なのだろうか?
「じゃあ今すぐそれをやってみればいいじゃない?」と自分に問うてみる。
過去に戻らなくても今からそれをやればいいじゃない?
大金がなくてもそれをやってみればいいじゃない?
「今の僕」がそれに言い訳をする。
いや、でも・・・・・・
できない理由をさがす。
昨日、僕は新しい電波時計を買った。